グレーゾーン金利撤廃はやみ金被害を拡大させるといわれた昨年末の法改正。しかし、施行して10ヶ月を経た今、濡れ手に粟のはずの闇金業者の数は激減し、過払い金返還訴訟で懐を肥やす弁護士が急増しているという。グレーゾーン金利撤廃の舞台裏を覗いてみた。
闇金を取り巻く状況は厳しくなったが、貸し出しを続けるために闇金業者も旧来の営業手法を改めつつあるとの指摘もある。
事業再生コンサルタントとして多重債務問題にも取り組んでいる吉田猫次郎氏は語る。
「私が闇金に手を出した'99年頃は、職場、人妻への電話や訪問など当たり前で、人妻の葬式で香典を持ち去られたり、拉致されるケースもあったくらいです。なのに当時の警察は民事不介入一辺倒で、『借りたものは返さないと…』なんて言うほどでした。それが'03年以降は変わりましたね。今そんなことをすればすぐに捕まってしまいますから、実際には、闇金はもう何もできませんよ。昔は警察が動かないのでナメていたんでしょうね」
締め上げすぎて警察や弁護士に駆け込まないように、取立て行為をソフトにしているというのだ。現に、前出の堂下調査でも、闇金被害者のうち、70.9%が「金利が高い」と感じながらも、「取立てが非常に厳しい」と振り返るのはわずか32.5%なのである。
多くの闇金が撤退する中、今も生き残っている業者は闇金らしからぬソフト路線で顧客の維持に努めている様子だが、これについて、前出の元闇金業者、田辺氏は苦笑気味に暴力団のお家事情を語る。
「最近は末端構成員が闇金のシノギで捕まると、損害賠償請求や刑事裁判で、組織のトップまで使用者責任が拡大適用されてしまうんです。だから、大抵の組織では闇金業者を禁止してます。ヤクザの”直接のシノギ”として闇金はもう成立しにくいんです」
こうした闇金業者のうち、ガラの悪い者から架空請求やオレオレ詐欺などへ業種を替えているために、残された闇金業者は必然的にソフトになったというのだ。
「そもそも暴力的な取り立てなんて、私が現役の頃からほとんどありませんでしたよ。大体、闇金の基本は個人営業の小口融資です。100万円や200万円なら話は別ですが、3万?5万円の回収のためにムキになるヤツなんていません。暴力的な取り立てをできるのは、大手の業者だけでした」
いくらソフトだったといえ、親戚や勤め先、近隣人妻住民への恫喝まがいの催促電話や嫌がらせは彼らにとっての”ソフト”であると肝に銘じておきたい。
こうした”自浄作用”の結果、闇金業界はもはや暴力団が運営する悪徳金融から、ビジネスモデルを変化させつつあるようにも見える。
ここから、低信用人妻顧客へのアプローチで彼らの巻き返しはありうるのだろうか。
「いや、闇金業界にまだ残っているのは、どちらかというと、逃げ遅れて行き場がない連中ばかりですよ。私がやっていた頃に闇金のドル箱だったパチスロ人妻客は吉宗やミリオンゴッドなどの爆裂4号機撤廃で激減した。なにしろ今は、昔闇金をやっていた連中が、闇金業者を恐喝したり強盗して金を取るのがはやってるくらいですから。仁義もクソもないですよね」
と、闇金業界を嘆くのは田辺氏。最近では車で全国をキャラバン遠征しながら、偽造免許やパスポートと他人名義の口座を使って各地の闇金から金を踏み倒して回る人妻、いわば”闇金バスター”ともいうべきグループまで現れているのだとか。
かつて'01年まで都内で闇金を営み、その後はオレオレ詐欺、不動産詐欺、健康食品詐欺などを手掛けた青木進氏(仮名・32歳)は、闇金狙いの手口と利点をこう説く。
彼は、債務者の息子の小学校あてに、返済督促のFAXを送っているときに思いついたそうだ。
「闇金の債務者を見つけて、そいつの代理人だと言って弁護士を名乗り、闇金業者にFAXを送るんだよ。損害賠償を払わないと刑事告訴するぞってね。そうすると、大抵の業者はおとなしく金払って泣き寝入りだ。あとは強盗。闇金の事務所に強盗に入っても、連中は警察に通報できない。当たり前だけど、警察行ったら捕まるもん。その点が闇金の弱点だよね」
なんとも極悪非道な話だが、非合法のフィールドで商売する以上は致し方のないことなのだろう。
また、グレーゾーン金利撤廃によって過払い金返還訴訟景気とも呼べる現象が弁護士業界には起きているという。過払い金返還訴訟の額は月に400億円にも上り、”過払い成金”とも呼べる弁護士も登場した。
借金問題を担当する弁護士のなかには悪質な輩も存在すると宇都宮弁護士は語る。
「整理屋と提携する弁護士もいますし、過払い金を依頼者に返さない、預かり金を横領するなどのトラブルも目立ちます。悪徳弁護士や司法書士の被害に遭わないためにも、借金の相談は弁護士会や司法書士会を通してほしい」
誰が味方で誰が敵なのか、これではまったくわからない。それほどまでに業界は混沌としているのだ。
では、今後、低信用顧客の資金需要は一体誰が満たしてくれるのだろうか。元通産官僚で専修大学客員教授、石川和男氏の言葉は、一つの回答になりそうだ。
「日本政策金融公庫を有効に活用すべきです。財投機関債で資金を調達して、ハイリスクの金融市場をカバーさせるんです。公的融資だと過剰な貸し付けや反社会的な取立てへの懸念は起きません。その代わりにリスクに見合った金利はきちんと設定する。そのため、現行の不確定な利息制限を抜本的に見直す必要がありますね」
闇金対策から始まった全国民的な高金利アレルギー。当の闇金が牙を折られた今こそ、真の消費者目線による経済金融政策が必要ではないだろうか。